地方の医療現場における方言の問題

今やネットの浸透が進み、全国ネットのテレビやローカルの情報が瞬時に拡散される時代になった。
そうした影響により、若い世代の方言が標準語に近づき、マイルドなものになってきたと言われている。
そのため医療現場では、高齢の患者が話す方言を、若い看護師が理解しにくくなるといった問題が出てきている。

また、地元から離れて勤務地を選ぶ人が増えてきたこともあり、その地域の方言に全く馴染みがない看護師もいる。
方言のクセが強すぎる場合、仲介者がいなければ病歴聴取やコミュニケーションを取ることすら難しいケースも珍しくない。
全く意味がわからず何度も聞き返してしまうと、相手にストレスを与えてしまう。
同時に、方言を違う意味で捉えてしまえば、場合によっては医療事故に関わるようなミスに発展する危険さえあるだろう。
地域ごとの問題であるため、全国的な問題になりにくいが、世代間の方言の問題は、外国人とのコミュニケーションと同様に医療現場で取り組まなければならない重要な案件だといえるだろう。

方言の問題の対策方法として、高齢の患者の問診を用意し、「はい・いいえ」で答えられるように工夫するやり方がある。
しかし、これでは詳しい病状を聞くことができず、より的確な判断をするという意味ではあまり良い方法とはいえない。

こうした方言の問題を解消するには、病院ごとにその土地の方言を前もって看護師にレクチャーする必要がある。
方言のデータベースを作成する対策を講じておけば、方言がわからない看護師の不安も減り、安全性の高いケアを提供することができる。
また、辛い状況におかれた患者にとって、地元で聞き慣れた方言は温かみを感じられるもの。
過度に丁寧な標準語を使うより、方言を使った方が相手を安心させる場合があることは知っておいた方がいい。
そういった意味でも、地域ごとの方言を習得することは医療従事者にとってメリットとなるのだ。